(※動画埋め込み)
「わあ……」
瞳を輝かせて橋の下をのぞく美世を見て、清霞は自分の表情が和らいでいるのを感じた。
紅葉狩りへ行こうと思い立ったのは、つい数日前。
長らく物見遊山にも出かけられなかっただろう美世を、連れていきたいと思ったのだ。
(正解だったな)
近場だが、紅葉の名所として知られる庭園は、橙に黄、赤に色づいた木々で美しく染まっている。
流れの緩やかな川を渡す太鼓橋は鮮やかな朱で、まるで違う世界に迷いこんだがごとく、幻想的だった。
「旦那さま、旦那さま」
らしくなく昂ぶった様子で、忙しなく自分を呼ぶ美世につられ、清霞も川をのぞく。
底の石まで見通せるほど澄んだ川面にひらひらと舞い落ちた葉が、ゆらゆら、揺蕩いながら流されていく。
美しい秋の景色であったが、清霞の目に映るのは、薄紅の頬で楽しげに紅葉を眺め、味わう美世の姿。
「なんだか、紅葉に包まれているみたいです」
「ああ」
「――綺麗ですね」
ふ、とこちらを振り向いて笑んだ美世に、清霞は目を瞠り――微笑みながらうなずいた。
「そうだな」
来年も再来年も。二人でこうして紅葉を、もっと四季折々の風光明媚な景色の数々を、見に行けたなら。
清霞はひとり、未来に思いを馳せた。